コンパスクラブ 5月コラム掲載|目的と目標の違いを知る

コンパスクラブ 商工会100万会員ネットワーク「あきない知っ得情報」5月コラムを担当させていただきました。

http://compass.shokokai.or.jp/pickup/yakudachi/shisaku/column1705.html

※上記サイトは令和2年3月31日をもって閉鎖となりましたため、本コラム寄稿を掲載させていただいております。

「目的と目標の違いを知る」

皆さんは「目的」と「目標」を明確に使い分けていますか?普段はあまり区別せず同じ意味の言葉として、混同して使っていませんか?「目的」と「目標」は同義語のように見えますが、その意味するところは全く異なります。「目的」と「目標」の意味を理解し、明確に使い分けることできっと企業経営にも役立つことと思います。

(1)到達点(ゴール)と道標(マイルストーン)

【目的】成し遂げようとする事柄。行為の目指すところ。意図している事柄。
【目標】目じるし。目的を達成するために設けた、めあて。的(まと)。
<出典:広辞苑 第六版 岩波書店>

つまり、「目的」は到着点(ゴール)、その目的達成に向かって設けた、通過点の要所、目じるしが「目標」です。事業活動においては、企業理念、企業が存在する理想の状態、進むべき方向など、あり方(Being)を示すものが「目的」です。その目的(企業理念・あり方)を達成するための道標(マイルストーン)や指標を定めること。目的を達成するために必要な具体的な行動、すなわち手段、やり方(Doing)を定めることが「目標」です。
「目的」はあり方(Being)を示しますので「◯◯を提供することで地域社会に貢献する」など概念的、抽象的ですが(企業によって具体的な場合も勿論あります)、「目標」は、行動、やり方(Doing)を示すものですので具体的で必ず定量的(測定可能)なデータである数字、金額などを用いて設定、評価します。
また、「目的」はひとつ、「目標」は、目的達成の手段ですので幾つもありますし、1年目の目標、2年目の目標など、段階的でもあります。

 

 

(2)目的と目標の使い方について
それでは企業経営の場において、目的と目標をどのように使い分けたらよいのか? 一例を挙げさせていただきます。

① 目的は経営のあらゆる判断基準となる
経営者は企業経営を行っていく上で、常に選択する場に立っていることでしょう。逆に言えば「選択する」ことが経営者の役割、一番の仕事とも言えます。商品開発、営業活動、社内コミュニケーション、人材育成、あらゆる判断局面において、選択基準、指標に「目的」である企業理念、あり方を用いることで、一貫性ある選択が出来ます。
例えば、ある大口の取引の話しがあったとして、それが企業理念と大きく異なるものであれば、短期的には売上に繋がったとしても、中長期的にはよい結果に繋がる可能性は低いでしょう。なぜなら目的に沿わない活動(言動不一致)は、必ず何らかの歪みを生じさせます。仮に経営的にやらざる得ない状況であった場合には、その理由を従業員とも共有するなど配慮し、目的(企業理念・理想のあるべき姿)の一貫性を保つことが大切です。

②目標設定のフレームワーク「SMARTの法則」
目標は先程「目的を達成するために必要な具体的な行動」「測定できるもので設定、評価」と説明しましたが、この目標設定をわかりやく説明している目標設定のフレームワーク「SMARTの法則」(提唱者:ブライアン・トレーシー 米国・経営コンサルタント)をご紹介します。ネット上では諸説ありますが著書から引用させていただきます。

S=Specific(具体的)
M=Measurable(測定可能)
A=Achievable(達成可能)
R=Realistic(現実的)
T=Time-bounded(期限付き)
・具体的 (中略)目標達成にかかわるすべての人が理解できるように、完全に明確な言葉で表現されている。あいまいな部分は一切ない。目標達成の過程で生じる問題のほとんどは、そもそも目標が十分に明快で具体的でなかったことから生まれる。
・測定可能 (中略)数字、または金額で表すことができる。それはいくつかのステップに分割でき、そのステップもそれぞれが測定可能だ。計測する基準が明確であるほど、その数字の達成に向けて努力し、そして達成するのが簡単になる。どの程度まで目標達成に近づいているかは、子どもでもわかるぐらいでなければならない。
・達成可能 (中略)時間、お金、外部環境、経済情勢、メンバーのスキルと能力の制約のあるなかで達成することができる。また、会社の内外に存在するさまざまな制約があるなかでも達成できる。たとえば、「売上げを2倍にする」という目標は、目標の条件をまったく満たしていない。正しい目標は、次のような表現になる。「今から12カ月間で、売上げを1カ月に7パーセント、1週間では約2パーセント伸ばす」この目標なら、具体的で、計測可能で、達成可能であり、最終的には1年で売上げを2倍にすることにつながっている。
・現実的 (中略)目標が現実的な範囲内にあるので、多くの人が達成できて自信をつけることができる。だが、たいていの目標は現実を正しく反映していないため、目標というよりも単なる希望になっていることが多い。
・期限付き (中略)目標の各段階で期限があり、最終的な目標達成にも期限が決まっているため、スケジュール通りに進めるのが簡単だ。
<出典: ブライアン・トレーシー著(岩田松雄:監訳、弓場隆:訳)、「人を動かせるマネジャーになれ!」、㈱かんき出版、2013年 131〜133ページ>

 

この様に目標設定においては、活動内容について細部にわたり行動を分解し、達成の指標と期限を設けることで目標達成への道筋ができます。先程、目標はひとつでない、段階的でもあると説明しましたが、各プロジェクト(商品開発・販売促進活動・営業活動など)ごとに、1年目の目標、2年目の目標として計画し行動することで、目的=最終的な到達地点(ゴール)へ向けて前進することができます。

また、プロジェクトや年間目標を計画し事業活動していくなかで、その目標到達が活動の目的となってしまう(すり替わってしまう)場合が少なくありません。これが目的と目標を混同してしまう所以でもあるように思います。“木を見て森を見ず”をいう諺があるように、いつも森(目的:経営理念・理想のあるべき姿)を忘れずに、目の前の木(目標:日々の行動)を切り開いて進んでいただきたいと思います。

 

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