コンパスクラブ 3月コラム掲載| 実際に事業計画作成をしてみましょう!その2:収支計画の立案について

コンパスクラブ 商工会100万会員ネットワーク「あきない知っ得情報」3月コラムを担当させていただきました。

http://compass.shokokai.or.jp/pickup/yakudachi/shisaku/column1803.html

※上記サイトは令和2年3月31日をもって閉鎖となりました。当時のコラム寄稿原文をそのまま掲載しております点、予めご理解ください。

 

「実際に事業計画を作成をしてみましょう! その2:収支計画の立案について」

2月号コラム「実際に事業計画作成をしてみましょう!」では、実際の事業計画を作成する上での事業内容の骨子について説明させていただきました。今回はその続きである収支計画の立案について説明します。

1.収支計画の目的
収支計画は、マーケティング的な視点では、自社が描いた商品・サービスがひとつの事業として、ビジネスとして成り立つのか数値化して把握すること。また、財務管理の視点からすると現金の動きを把握するものになります。言いかえれば、決算書の損益計算書の未来予想図をつくると思っていただいてもよいでしょう。それでは、以下に収支計画の作り方についてご説明させていただきます。

 

2.収支計画の大前提
収支計画は、簡単に説明すると「収入」―「支出」を表で表したものです。

収入 = 商品・サービスの売上
支出 = 事業活動を行っていく上での必要な費用(経費)のこと。

支出は大別すると固定費と変動費があります。固定費は、売上の増減に関わらず一定的にかかる経費。売上がなくても発生する費用です。そして、変動費は、売上の増減に比例する。売上がない時は基本的には発生しない。

【固定費】
・売上の増減にかかわらず一定的にかかる経費。売上がなくても発生する費用。
(例)役員報酬・地代家賃・リース料・保険料・減価償却費(※詳細後述)・人件費(社員給与など)

【変動費】
・売上の増減に比例する。売上がない時は基本的には発生しない。
(例)水道光熱費、旅費交通費、通信費、運送費、広告費、接待交際費、人件費(社員残業代、アルバイト給与など)
・売上原価(原材料、商品仕入れ、外注費、製造人件費など)も、大別では変動費として捉えてください。

 

そして、収入(売上)と支出(経費)の固定費と変動費の関係をグラフで表すと以下のとおりになります。
ここでは詳細は割愛させていただきますが、収入(売上)が支出(経費:固定費・変動費)を上回らなければ、すなわち損益分岐点を越えなければ、利益を生み出さないことをイメージで捉えていただければと思います。この点を踏まえて、収支計画の作成方法について以下に説明していきます。

<ご参考> 損益分岐点の算出公式
損益分岐点 = 固定費 ÷( 1 -( 変動費 ÷ 売上高 ) )

 

3.収支計画の作成方法
 繰り返しになりますが、収支計画は、損益計算書の未来予想図です。考えた事業計画を具体的な数字として下記表の項目に具体的な数字を入れていき、事業のシミュレーションを行います。

社内においての経営改善計画、新商品開発を目的とした設備融資、創業補助金申請やその他補助金申請など、収支計画を立案する目的によって、必要な項目をどこまで細かく洗い出して検討するのかは若干変わってきますが、基本的な考え方として捉えていただければと思います。特に創業の場合の収支計画は、あまりどんぶり勘定ではなく、以下のように細分化された項目で検討された方がよいでしょう。

<収支計画表(例)>

収支計画の要点である3点について以下補足説明します。

①売上
基本的にどのような業種でも「商品・サービスの単価」☓「数量」で算出します。
業種により算出の考え方が違いますので、ネットや書籍などに様々な情報がありますのでご自身で調べてください。
例えば、製造業であれば、「商品単価(又は商品ラインナップの平均単価)」☓「販売見込み数」となります。販売見込み数は、既存顧客や新規顧客の想定や、その顧客の購入数に細分化して考えていきます。
飲食店の場合は、「席数☓満席率」☓「客単価」☓「回転率」で算出し、ランチタイムとディナー、閑散期と繁忙期のそれぞれの場合を考慮して算出します。

このように積み上げ式の算出による数値のほかに、想定したターゲット顧客を踏まえた商圏の市場規模から想定した数値、また既存事業の売上規模から想定した数値など、多面的に検証して算出します。

②売上原価
販売する商品仕入れ、製造するための原材料、外注費、また製造業であれば製造する従業員の人件費などになります。
「売上高」☓「原価率」で考えるのが一般的な判断基準です。原価率は業種ごとに異なります。業界の平均的なものがあるのでネット等を活用して調べるとよいでしょう。

日本政策金融公庫がHPに公表しているデータに小企業の経営指標があります。日本政策金融公庫に融資を受けている企業の財務諸表を分析して出した平均値の資料です。業種別に原価率だけでなく、様々な指標が掲載されていますので、収支計画の参考になればと思います。

<日本政策金融公庫HP 小企業の経営指標>
https://www.jfc.go.jp/n/findings/sme_findings2.html#tyousa

特に創業や異業種参入などの場合は、先ずは業界の平均的なものを参考にすることをおすすめします。これまでの経験を生かした事業という事であれば、経験を元にした原価率を設定されてもよいでしょう。

③一般管理費・販売管理費
固定費と変動費に大別され、上記で説明しているとおり損益分岐点、収益構造の考え方にかかわってきます。しかしながら、固定費と変動費の分類に正式な決まりがあるわけではなく、業種毎に異なります。自社の業種に応じて分類してください。また、固定費と変動費両方の性質が含まれている場合もあります。その際は、より性質の強い方に分類することでよいでしょう。

また、既存事業の延長上での新商品開発の事業計画などでは、既存事業の数値のパーセントで算出するなど、事業計画の内容や目的、必要とされる精度によって柔軟に考えればよいでしょう。

この3点を固めることによって、営業利益が算出でき、その事業自体の収支が可視化されます。企業規模の大小に関わらず、この営業利益が事業の収益の指標となります。

※減価償却費
減価償却とは「原価償却資産」を購入した際に一括して経費計上せずに、減価償却資産ごとに定められた年数に分けて経費計上する仕組みです。減価償却には定率法と定額法があります。

 

4.事業計画の骨子と一貫性をとることが大切
収支計画を作成する際には、2月号コラムで説明した事業の骨子と一貫性をとることが大切です。
マーケティング視点から考えた事業計画のストーリーを数値化することで、「売上」〜「売上原価(仕入)」〜「経費(販管費)」に整合性が取れているかを検証、確認することが出来ます。
例えば、事業計画では、売上拡大要素として、広告宣伝や販促プロモーションの施策を企画しているものの、収支計画に落とし込んでみたところ、販管費が膨らみ、営業利益がマイナスとなるシミュレーション結果になったとします。その結果、事業計画自体を見直す、資金調達を検討する、また、その年度は損失になるが次年度へのステップアップになると捉えるなどが検討できます。

このように、収支計画にすることで数値をとおした先を見通した検証ができます。収支計画に無理がある場合は、事業実現性が低いと判断せざるを得なく、事業計画の見直し、改善を図り、事業計画全体の精度を高めていきます。

 

4.補助金申請等の収支計画
ものづくり補助金等の申請書の場合、これまで説明させていただいた裏付けのもと、概ね3〜5年の事業計画としてまとめます。いずれも事業計画のストーリーと収支計画の整合性が取れていることが必要となります。

 

<補助金申請書の基本的な収支計画表>

 

2月号コラムと今月号コラムの「実際に事業計画を作成してみましょう!」はいかがだったでしょうか? 事業計画の作成は、最初は慣れないと思いますが、商工会の経営指導員も相談にのっていただけます。一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

以上、今回も長文になりましたが、参考にしていただければ幸いです。

 

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